前回に引き続き、抗精神病薬の副作用を見ていきます。
主な副作用は現場でもよく見かけますが、重篤な副作用もたまーに現れます。私も2年働いてて何度か当たりました。精神科単科の病院だと他の病院に転院することになってくると思います。早期発見し早期に対応できるようになっておきたいところです。
抗精神病薬の種類についてまだ見ていない方はこちら
同じように、参考にした資料です
抗精神病薬の副作用
主な副作用として以下が挙げられます。
- 錐体外路症状(EPS)
- 口渇・便秘
- 体重増加
- ふらつき
- 眠気
- 高プロラクチン血症
ひとつひとつ見てみましょう。
錐体外路症状(EPS)
ドパミンを過剰にブロックしてしまうことで現れる症状の一つです。
黒質線条体では、運動機能に関与しています。また、意思決定などその他の神経過程にも関与されると考えられています。
これにはドパミンが重要な働きをしているのですが、それを過剰にブロックしてしまうことで、運動調整機能がうまく働かず、錐体外路症状(EPS)が現れます。
- アカシジア(そわそわして落ち着かない)
- 急性ジストニア(筋肉の異常な収縮)
- ジスキネジア(体が勝手に動く)
と言われます。
同様に黒質の神経細胞の変性によってドパミンが作れなくなる病気にパーキンソン病がありますね。
口渇・便秘(抗コリン作用)
アセチルコリンという物質が働くムスカリン受容体をブロックしてしまうことで生じる症状の一つです。
アセチルコリンの働きを邪魔するので抗コリン作用と言われます。
アセチルコリンは副交感神経の働きを伝える役割を持ちます。よってこれをブロックするということは、副交感神経の働きを邪魔された時に生じる症状といえます。
=リラックスできない状態。
=胃腸は働かず、喉が渇き、排尿も減ります。また脳の活動も落ち、眠気、注意や集中力が散漫になります。
副交感神経の働きは目にも影響があります。瞳孔が開いて付け根にある毛様体の筋肉が緩み、うまく水が抜けなくなることで眼圧が高くなります。
体重増加
- ヒスタミンH1受容体遮断作用
- セロトニン2C受容体遮断作用
などによって、食欲増加や体重増加が生じます。
更に、代謝への悪影響もあるとわかっており、食べている以上に体重が増えます。
非定型抗精神病薬の方が代謝への影響が悪く、特にMARTAのジプレキサとクエチアピンには注意が必要です。
糖尿病の既往のある人には禁忌となっています。
ふらつき
アドレナリン受容体α1に作用するものが大きい薬もあります。
このα1は刺激が入ることで血管を収縮し血圧を上昇させます。
このα1をブロックしてしまうことで血圧を適切に上昇させることができず、脳に送り出す血液も減少してしまい、結果脳虚血状態となりふらつきを覚えることがあります。
眠気
抗ヒスタミン作用の影響が大きいです。他にも、
市販の風邪薬とは花粉症の薬からもくる眠気と同じです。ヒスタミンは脳の覚醒状態の維持に必要なものです。
- セロトニン2A受容体遮断作用
- アドレナリンα1受容体遮断作用
なども関係しています。
高プロラクチン血症
ドパミンを過剰にブロックしすぎてしまうことで現れる症状の一つです。
下垂体でそれが働いてしまうと、プロラクチンというホルモンを増やしてしまいます。
それにより、女性では
- 乳汁分泌
- 生理不避妊
- 不妊の原因
- 胸が張って痛い
男性では
- 女性化乳房
- 性機能低下
が現れます。
その他(重篤)
稀に以下が起こります。
- 悪性症候群
- 不整脈
- アナフィラキシーショック
- 遅発性ジスキネジア
- けいれん
- 麻痺性イレウス
- 無顆粒球症
最も重篤なのは悪性症候群です。
悪性症候群
これは抗精神病薬だけでなく向精神病薬における副作用で最も重篤な副作用です。正確な機序はわかっていませんが、「脳内のドパミンの動体が急激に変化すること」が貴女の中心にあると考えられています。
私の現場でも抗精神病薬を投与中の方でなかなか思うように効果が得られない場合、薬剤調整を行うのですが、短期間で量を増やしたり減らしたり、違う薬剤に変更したり戻したり・・を繰り返していると急な減薬、増薬により発症することがありました。
非定型精神病薬で生じることはほぼ少ないですが可能性はゼロではなく、注意しなければいけません。
全ての薬を中止し、補液を行いながらダントロレンナトリウム(ダントリウム)を投与します。
それでも改善が見られない場合、最悪死に至る重篤な副作用です。
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