CVC挿入の適応
IVH(高カロリー輸液)を必要とする場合
高カロリー輸液とは、高濃度のブドウ糖を含む輸液。
ブドウ糖の濃度が高いと浸透圧が高くなり、血管痛や静脈炎のリスクが高くなるが、中心静脈は心臓に近く流れが早くて太い血管であるため薬剤が長くとどまらず静脈炎のリスクが低い。
そのため高カロリー輸液は CVCから投与する必要がある。
末梢ルート確保が困難な場合、多くの薬剤を投与する必要がある場合
ショックバイタル、熱傷、外傷、高度な肥満や高齢など…。ショックバイタルで急速輸液や昇圧剤の使用が必要な場合もCVC挿入の検討が必要である。
CVP(中心静脈圧)の測定が必要な場合
・CVPが高い→輸液過剰、心不全 ・CVPが低い→出血、脱水
CVCの挿入部位
内頸静脈
メリット:手技が比較的容易、出血時の圧迫止血が容易
デメリット:固定が難しい
鎖骨下静脈
メリット:カテーテル固定がしやすい、感染のリスクが低い
デメリット:手技が難しい、誤穿刺による気胸・血胸のリスクがある
大腿動脈
メリット:手技が比較的容易、出血時の圧迫止血が容易
デメリット:陰部が近く排泄物により汚染されやすい。長期留置により胎動が制限され、深部静脈血栓症のリスクがある
CVCの構造と投与経路
CVCはポートの数によって名称が変わる。投与経路が1つのシングル、2つのダブル、3つのトリプル、4つのクワッドがある。下図は最も使用頻度の高いトリプルルーメンのカテーテル。
Distal(ディスタル)
メインルート。心臓に近く出口の穴が一番大きいため、粘稠度の高い高カロリー輸液や大量輸液が必要な場面に使用される。
Medial(メディアル)
真ん中にある穴。私の勤めている病院では鎮静系やインスリンの持続投与、CVP測定に使用されている。
Proximal(プロキシマル)
挿入部位から1番近く、心臓に遠い穴。1番早く血中に流れ出るため昇圧剤の投与ルートとして使用される。
CVC挿入による合併症・観察
気胸・血胸
内頸・鎖骨下静脈穿刺は、肺の近くを穿刺する。そのため、胸膜を誤穿刺してしまった場合、気胸・血胸の危険性がある。気胸や血胸が起きると、胸痛・呼吸困難・SpO2低下が起きる。緊張性気胸を起こすと空気で心臓が圧迫される状態となり血圧低下、ショックバイタルに陥る危険性がある。
この状態が起きてしまった場合は、緊急で胸腔ドレナージや、状況によっては開胸オペが必要となる場合もある。
穿刺時は呼吸状態に注意して観察を行い異常時は医師に迅速に報告をする。
腹腔内出血
大腿静脈を貫通してしまうと、血管が破れ腹腔内に出血が起こりショックバイタルに陥る危険性がある。その場合は止血術を行う必要があるため、アンギオやオペが必要となる。
動脈誤穿刺
動脈を誤穿刺してしまった場合には、直ちに穿刺針を抜去して圧迫が必要となる。抗凝固薬を内服中で出血傾向のある患者さんの場合は皮下血腫の形成リスクが高まる。止血困難な場合にはオペが必要。
空気塞栓
CVC挿入時に胸腔内の陰圧に影響して空気が血管内に引き込まれ発生する。空気塞栓が起こると、肺動脈塞栓による胸痛、呼吸困難、頻脈などの症状が出現し脳塞栓になると、麻痺や意識障害などの症状が出現する。
カテーテルの位置異常
カテーテルが挿入されすぎると、心室性期外収縮(PVC)が誘発される。カテーテルを引いて先端を正しい位置に戻せば消失するため、介助につく際はモニタリングを行い不整脈出現時は医師に報告する。挿入後は胸部Xpでカテーテル先端が適切な位置にあること、気胸、血胸がないことを確認する必要がある。
カテーテルの正しい先端位置は、右心房に近い大静脈
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